春の運動会シーズン真っ盛りだが、近年、全国の小中学校で広がっているのが、
午前中もしくは昼食時間を設けずに午後の早い時間までに終了する“時短運動会”だ。
ほんの数年前までは、「学校行事の一大イベント」や「年に一回のこどもの晴れ舞台」と例えられていた運動会。
春から運動会のためにいっぱい練習をして徒競走や選抜リレーのほか、
玉入れや綱引き、騎馬戦、組体操、ダンスなどさまざまな種目
が用意され、午後3時、4時ごろまで行われることもざらでした。そのため、
午前の10時ごろに始まり午後の4時ごろに運動会を締めくくることが多かった。
しかし最近では、午前中もしくは昼食時間を設けずに午後の早い時間までに
終了する“時短運動会”が主流と化している。
札幌市内の小学校では、じつに全体の6割超が「昼まで開催」の予定だという。
どうして“時短運動会”になりつつあるのか?
教育評論家の石川幸夫氏がいう。
「組体操や棒倒しなどは子どもたちがケガをして危ないということで、ほとんどの学校で禁止になりましたし、順位で優劣をつけないために、
徒競走の『手つなぎゴール』や短距離の『全員リレー』
にルール変更する学校も増えました。本来の“競う”運動会から、
日ごろの体力づくりやチームワークなどを保護者に“披露する”
だけの機会に変わりつつあるのです」
時短化が進んでいるのは、単にこうした禁止・変更種目が増えたからだけ
ではありません。埼玉県の公立小学校に勤務する30代の教師が話すには、
「今年はゴールデンウイークが10連休もあって、ダンスなど運動会に向けた
練習をする時間がほとんどなかったうえに、6月になると高学年は修学旅行があるので、
その準備も大変。また、来年からは学習指導要綱の改定で、
小学3年生以上の英語の授業数が増えます。正直にいうと、
あまり運動会にばかり時間を割いていられないのが現状です」
働き過ぎとの指摘も多い学校教員の“負担軽減策”として運動会の規模縮小
が図られている背景もあるのでしょう。
保護者も“時短運動会”に賛成?!
一方、年に1度の我が子の晴れ舞台を楽しみにしている保護者にとっては、盛り上がりに欠ける運動会の時短化に
反対の意を唱える人も多いのかと思いきや、意外にも賛成の
声は大きいのです。
「ウチは共働きで、毎年、朝早くにお弁当を作るのも面倒ですし、
夫も明け方から場所取りのために校門前に並ぶ“恒例行事”
に疲れてしまって……。今年は開会式ギリギリに行って、
校庭が見えない後ろでも座れる場所を確保して、
子どもの出番の時だけ前のほうで見る予定です。
もう午前中だけの運動会になってもいいと思います」(埼玉県40代女性)
弁当要らずの時短化となれば、こうした共働き夫婦の負担を減らす
こともできますが、最近は午後まで運動会を開催する学校でも、
あえて親と子が別々に昼食を食べる時間を設けているケースもあります。
これは弁当を作れない共働き夫婦や、母子・父子家庭への配慮
だけが理由ではありません。
「最近は5月でも気温の高い年が多いので、
炎天下での長時間観戦に具合を悪くする親や祖父母もいます。
そうかといってテントを張るのは禁止なので、
木陰で休んだりお弁当を食べたりする場所と、
観戦するスペースの2つを陣取る家族が増えました。そこで、
去年から昼食を子どもは教室、
保護者は自宅に一旦帰って食べてもいいというスタイルになりました」
(千葉県30代女性)
このような意見がある中、石川氏はこんなことも言う。
「親はまだしも子どもは応援合戦などでずっと直射日光を浴びているので、
長時間の運動会で熱中症にでもなったら、
すぐクレームに繋がります。そうした問題を起こさないためにも、
屋内での昼食や、運動会自体の時間見直しは仕方のないこと。
逆に小雨で順延になっても学校に『なんでやらないんだ!』
とクレームの電話がかかってくる時代ですしね」(石川氏)
教育関係者の中には、
「時短化してまで続けるくらいなら、
いっそ運動会自体をやめてしまったほうが学校も
保護者も楽になるのでは」
いずれ運動会が無くなる時代も、そう遠くないのでは?
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